小売市場からの”食味旬味”便り
走り旬名残り

本物の食材のおいしい食しかた

今回の食材は

真鯛の画像

春の祝膳
真鯛(桜鯛)

真鯛ってどんな魚?

鯛と名のつく魚は多いけれど、鯛を代表する魚が名前の通り“真鯛”でしょう。

旬を迎えた春の“真鯛”は、味はもちろん姿も色も美しく、「桜鯛」という美しい名前がついています。 また、春のお祝いごとに欠かせないものとして尊重されてきた魚です。

神戸の市場には、朝獲れたばかりの、国内産では最上とされるいわゆる「明石鯛」が朝のうちに市場に入ります。
これは神戸ならではの魅力です。
ぜひ、旬の新鮮なおいしい魚を食べてみてください。

おいしい選びかた

“真鯛”は、俗に目の下1尺(約30cm)といわれる1.5~2Kg程度のものが脂ものっていて、しかも身が引き締まっていておいしいです。

天然物の旬は産卵前の3月~4月ですが、梅雨の養分を含んだ海で、一回り大きく成長した7月のはじめごろの鯛もまたおいしいといわれています。

養殖物の鯛は身が少し柔らかく、黒味を帯びています。

天然物と見分ける方法は、しっぽのかたちと桜色。
(これは実際に見比べないとわからないでしょう)。
養殖物も最近は随分おいしくなっていて、焼き物だとかえっておいしいくらいです。
値段が手ごろなので調理法を工夫して手軽に食べてみてください。

お店で買われるときは、ぱっと見たときの印象が「乾いた感じ」がしない、みずみずしいものを。
水をかけているのとはまた違う、生き生きした張りのあるものが新しいので、よく見てみてください。

それから、“真鯛”は店頭に並ばないことが多く、たいていは店内のいけすで泳がせています。
できれば、前もって、いつ、どのくらいの予算の真鯛がご入用か教えてください。
ご用意しておきます。

価格はその年によりますが、1kg 5000円~6000円くらい。

本当においしい天然物を、家で4人でたべるなら2Kgくらいの大きさが適当でしょうか。
そうすると1尾2万円くらいになりますね。
やはり高級魚ですね。

ちなみに、四国、日本海、和歌山から入る近海物のれんこ連子鯛は、1尾1500円~1600円ほど。
家庭で焼くには扱いやすい大きさで、十分おいしいですよ。
お料理のビギナーさんは、これくらいから始めてみるのもお勧めです。

おいしい食しかた

(1)おいしい下ごしらえ

鯛は“はれ”の食べ物、まさに高級魚です。
さばくのから、お刺身まではプロに任せてください。
お刺身、煮付け、塩焼き、お鍋…食べ方をきっちり教えてもらえたら、すべてきれいにさばいてお渡しします。
ご家庭でさばくときの注意はうろこです。鯛はうろこが多いので。特にひれの裏側が見落としやすいので注意してください。
頭のうろこは、熱湯にさっとつけたあと、流水で流しながら取ると手の爪でもとれます。

(2)おいしい食しかた

神戸は朝とったばかりの天然の明石鯛をお昼には食べられる、恵まれた環境にあります。
旬の鯛は、ぜひ刺身で召し上がってください。
昼過ぎに買われて夜食べられるのでしたら、お刺身にします。
食べるまでに時間があくようでしたら「さく」でお渡しします。何なりとお申し付けください。

市場職人からのおすすめの食しかた!

家で“真鯛”をまるごと1尾食べ尽くす!

まずは、市場で生きた真鯛をGet!
その場で、うろこを取って、片身を「お刺身」におろしてもらいましょう。
お刺身をとった残りのなかで、お頭は他のあらと一緒に「かぶと煮」に。
「かぶと煮」にするって注文すると、切りにくい頭も左右2つに割ったり、中骨も食べやすい大きさに切り分けますよ。
残りのあらは、ぜひ「潮汁」に。
骨のついた片身は、これはまたおいしいところ。
さらに、頭側と尾側に切り分けて、頭側半分は「木の芽焼き」や「揚げ物」に。
尾の方は、ご飯とあわせた「鯛めし」はいかがでしょう。
最後に「鯛の子」はぜひ煮付けに、「皮」も脂がのっていて美味、細く切って和え物に。捨てるところのない食材です。

かぶと煮

〔職人さんのひとこと〕

切り分けたあらは煮る前に、一度熱湯にくぐらせてすぐに冷水にとりますが、このとき、一度にたくさんのあらを入れると、火を通しすぎて旨味が抜けてしまいます。
必ず、煮立った熱湯に少しずつ入れて、さっと通すだけにしてください。

かぶと煮画像

かぶと煮の作り方

昆布のつけ汁(2カップ)、酒(1/4カップ)、みりん(1/4カップ)、砂糖(大さじ2)、しょうゆ(大さじ3)を煮立たせ、そこに下処理をした鯛(1尾分約500g)を、入れて火にかけます。
再び煮立ったら落とし蓋をして中火で約30分。春らしく、木の芽と針しょうがを忘れずに。

潮汁

〔職人さんのひとこと〕

魚を扱うときのコツは塩。市場でうろこを取ってもらっても、調理する前にもう一度洗って、ざるにのせて、塩をふりしばらくおいておきます。
それから、熱湯をかけて冷水にとると、生臭みが消えます。

潮汁画像

潮汁のつくり方

鍋に水と昆布、下処理をしたあらを入れて中火にかけます。(あらは、さっと焼いてから入れる方法もあります)
季節のうどは短冊に切って、水にさらしておきます。
沸騰直前に弱火に落とし、昆布を取り出して、あくをとりながら弱火のまま14~15分煮て、塩を加えて味を調えます。
お椀に、鯛のあら汁を注ぎ入れ、うどをあしらい、吸い口には木の芽を添えましょう。

鯛めし

〔職人さんのいちおし!〕

鯛めしは料理店によって、ご家庭によってもさまざまな調理方法があります。
毎日ご飯を炊くのと同じように気軽につくってみてはいかがでしょう。
炊飯器にふだん通りの分量のお米とお水を入れて、塩焼きした鯛を上にのせます。
あとは少量の塩としょうゆで味付けして炊くだけ。鯛はすでに塩を含んでいることを忘れずに塩は加減して。それから、めんどうでも鯛の骨はきれいに除いてお茶碗に。